G1 サンドストームは珍玩具の域に片足突っ込んでる絶妙なデザインの玩具でしたがあれはあれで絶妙な可愛らしさがある傑作トイだったと思うんですよね。しかし今の基準であの玩具をリメイクしようとしたらちょっとやそっとじゃ立ち打ちできないと思うんですよ。その敷居の高さはサードパーティからも殆ど発売されてない 1辺りからも伺えますし(トリプルチェンジャーは非正規ではかなり人気のモチーフだと思ってます)。公式からのリメイクもトリプルチェンジャーじゃないマシンウォーズ版(1997、戦闘ヘリコプターに変形)、 Generations 版(2012、セクターセブンのデューンバギーに変形(リデコだからね……))が発売されていますが、トリプルチェンジャーとしては 2013 年に Generations / ジェネレーションズで発売された奴(私は後年中古で TG-29 サンドストームを購入)のみしかなく、こっちも敷居の高さが伺えます。ここまで全てリカラー/リデコアイテムだったのでレガシーユナイテッドで完全新規で Leader Class 玩具としての発売はそれはそれで感が無量しちゃう出来事ではありますよね、買わない選択肢は無かった……
なお今回ケージパーツ(エンジンガード/レスキュー用担架)が付属しており、バギー時はケージ部分はエンジンガードとして、それ以外も各部に取り付けて余剰なしとすることが可能ですが、これをやると組み換え感マシマシになってしまう上にエンジンガードはアニメーションデザインにのみ存在しオリジナルの G1 玩具には造形されていないので、今回は G1 玩具のリメイクだと思うので私は完全余剰のオプション部品として扱う事にしました。
※ TFWIKI#Legacy) の記述だとこのパーツはリーダークラスの価格を「埋める」(meant to"fill out" his price point)目的で追加されているとのこと。
オルトモード(デューンバギー):
少しフロントウィンドウが小さすぎる気がしますが、G1 玩具のデューンバギーを上手く再現できているように思います。個々のパーツを見ると(例えばリアウィングの小ささとか)、非常に格好悪いような気がするんだけどちゃんとまとまりのある「乗り物」に見えるのが地味に凄い。
例えばサードパーティの Dr. Wu MS-36 Sand Leopard は小サイズという制約があるって理由も大きいですが「自動車の記号は入れてるけどまとまりが悪くチキチキマシン猛レースのマジックスリー号のような異形感が出てしまうし、昨今のレガシー枠、割とオルトモードを蔑ろにしている気がするのでこんな架空ビークルだったらここに皺寄せ全部集めてくるのかな?と思ってたんですけど、 G1 玩具の架空のデューンバギーを底本にして現代的解釈でまあまあ及第点のオルトモードに纏め上げたの控えめに言ってなかなかの天才設計だと思います。
車高も高い!この設計は山田康記さんという人のようですが、インタビューからすると 2019 年入社とのこと。TF 設計チームの中でも最若手だと思うんですが、最初の Leader Class がいきなり最も面倒臭そうなこれを見事に纏め上げてらっしゃるので今後も期待しております。
tfwiki.net
この角度からはちょっとフロントノーズ部分がよく判らなくなっちゃってるんですが、これはロボットモードの腕の処理の都合でオリジナル玩具にあった葉巻型 F-1 的な細いボディから飛び出したタイヤ感が薄れちゃってるのが原因かな?と思います。ボディカラーが黒いからディティールつぶれちゃってるってのもあるんですが。
真上から見ると腕の黒いパーツがフロントタイヤのすぐ後ろに張り出して配置されているのでボディのスリムさが損なわれちゃってます。デューンバギーとしては夜分ここだけが残念ポイントじゃないでしょうか。しかしこの部分、隠せていないのはマイナスなんですが、車両の一部として一体感持たせようという努力の跡や固定方法は非常に考えられていて、あと TF あるあるですが手に取ってみると画像程違和感ないので許せてしまうという「手に取って遊ぶ前提の設計」なので私はアリだと思っています。
けどま、こんな感じで側面痩せさせられるアドオン出てしまったら多分買うな……(これは腕パーツを下に回しているだけですが。
底面。パーツ配置とかかなり G1 版に近いですよね。何よりヘリコプターの四枚羽がオリジナルとほぼ同じ方法で収納されているのが良い。尚エンジンガードを取り付けないと黒い方の銃はバギーモードで武器として設置できる 5㎜ 穴が見当たらなかったので私は底面のここに取り付けています。
側面。微妙に腕周りまでの車両前半ブロックとエンジン位置以後のブロックの水平レベルが違ってるように見えてちょっと気持ち悪い感じがするんだけど、気のせいかな?意図的にそういう設計のような気もするんだけど微妙なのでよく判らんですね。
タイヤはゴムではなく PVC なので多分経年劣化に強い筈。ゴム製タイヤみたいな割れとかはそんなに気にしなくて良さそうと思うんですがどうだろうか?個人的には経年もダメ(ブタジエンが可塑剤で劣化して黄変するとかなんとか)、紫外線もダメ(ブタジエンが紫外線で劣化して黄変してしまう) ABS 樹脂を AES とかに切り替えて欲しいと思ってるんだけど、AES 高いらしいので無理だろうなあ。けどゴム部分を可塑性のある PVC に変更したのは多分経年劣化対策だと思うので期待はしておきますね。
エンジンガードを取り付けていないとエンジン部分の形状がちょっと変なのがバレちゃうというか、あれで上手く誤魔化しているところはあるので「完全変形が!」とかいう拘りが無い人はケージパーツ使った方が良いですね。
使うとこう。エンジンブロックの後半分が段差で低くなっているんだけどそこにウインチパーツを取り付けてボリューム感を調整し、エンジンガードを取り付けることでなんとなく一体に見えるようにするのはこれはこれでなかなか手練れの仕業感ありますね。若いのに老獪なのか、だれかサポートしてくれたのかは判りませんが。
ケージパーツの底面プレートはボディ前方の底面に格納できます。
エンジンガード取り付けるとその上に武器を固定できるので急に軍用バギー感が出てきて、これはこれで確かに完成されたデザインという感じがあります。
個人的にバギーモードで一番すごいと思ったのはこのリア周りの処理。ヘリコプターのフロント部分を半分に割ってリアフェンダーの左右として利用することで急に自動車としてのまとまりが出て飛び出したボートの尻のような珍奇構造が全部誤魔化せて格好良く見えるようになってしまうの魔法に近いよね。
オルトモード(ヘリコプター):
G1 玩具の時にそのオルトモードがシコルスキー……おい!下ネタやめろ!汁粉スキーだろ!……あ、こっちでいいのか、気を取り直しまして、オルトモードがシコルスキー CH-53 シースタリオンという事になっていましたが、回転翼の枚数からして異なりますし(CH-35 は 6 枚ないし 7 枚ブレード)、何より特徴的なエンジンナセルが省略されてしまっているので、実際には概念の大型輸送ヘリコプターみたいな形状の航空機でしたが、今回のリメイクではそっちに忠実な架空のヘリコプターを再現しています。先日初めてアニメでサンドストームのオルトモード見たけど、そっちは水上着陸用のフロートを備えた中型の海難救助ヘリコプターにトランスフォームしてて吃驚しました。まあバギーとのサイズ的にも役割的にもそっちの方が相応しいですよね。
ずんぐりしたノーズが今一つ CH-53 感ないんですが、窓の位置や形状などはかなり似ています。
(多分)開き直って架空の大型輸送ヘリって事に全振りしたサードパーティの Dr. Wu MS-36 Sand Leopard のウィンドウスクリーンデザインと比べるとまだちょっと CH-53 にディスガイズしようという意思が見えますね。
スポンソンに見立てたロボットモードの腕パーツは G1 玩具と比べるとかなり後方の、本来スポンソンがあるべき位置に移動しているので全体的なバランスは当時玩具よりもよくなっていると思います。
尾翼が貧相になっちゃってるのがヘリコプターモードでは最も残念な点ではないでしょうか。でもここバギーモードでリアウィングに見立てる都合もあってこの形状だからな……
寸胴ではあるんですが図面みる限りだと CH-53 も割とお尻の方まで太いので一概にこの形状が似てないとも言い切れないところがあります。天面部分はちゃんとアールがついて大型ヘリコプターとして全体のまとまり感は高まっています。上面後半部の大きな開口を塞ぐためのカバーなども芸コマな設計で好き。
底面。底から顔見えフォーマーですね。どんでん返しで収納されたリアタイヤが襟元パーツの切り欠き部分にピッタリ収まるなどかなり気持ちがいい変形パターンです。リアタイヤを寝かせて互い違いに配置するのもよいですね。
ロボットモードの胸部カバーの下端(バギーのフロントスクリーン部分)を畳むことでフロントタイヤ収納のクリアランスを稼いでいますが、その時に畳んだフロントウィンドウの上端部からフィギュアスタンド用のピン穴が出現するのもなかなか優れたアイディアだと思います。ただちょっとここの穴が浅いんですよね。
2 種の銃はスポンソンの 5mm 穴に取り付け出来ます。
ケージパーツはヘリコプターモードではレスキュー用担架としてウインチを介して取り付け出来ます。
担架が高速回転。救助された女性はめまいと吐き気に襲われた。 pic.twitter.com/zZqukCkbvf
— ロイター (@ReutersJapan) 2019年6月15日
こういう奴なんでしょうね。サンドストーム君は損害賠償されないようにやって欲しいですね。
ロボットモード:
この肩から上のキブルの塊のような猛烈な構造物を見よ(´^ω^`)
これこそがサンドストームのアイデンティティ。サウンドストームはアニメーションと玩具のデザインが大きく異なっていますが、このスリムで足長なスタイルや手首がグレーで丸っこいデザインは恐らくアニメーションデザイン寄りのものです。頭部は完全に玩具準拠だし、前述の背負ってるキブルの処理やオルトモードは玩具に近い。
外観上の特徴である背負い物から前方に突出したヘリコプターの尾翼部分は独特の解釈で小型化されており、その下にあるアニメーションでもシーンごとに解釈が異なるトサカ状のパーツはヘルメットの上部という解釈です。
肘部は変形の都合で二重関節化されており、肘関節部分で下腕が少し後ろにオフセットされたような構造になっています。
脚部は膝下の側面にパネル状の構造物があるためスリムな太ももに比べて脹脛部分が非常に大きく見えます。
背部から見ると背負い物がデカくてかなりシンプルな形状に見えますね。この背負ってるデザインはサンドストームに於いては無論アリです。踵はコケ防止重視で後方に板状のパーツが付きだしたデザインで、やや格好悪いですが実用性は十分です。実際背負い物がデカいのでこの構造は必要かと。
脚部は G1 玩具のように伸縮式ですが、非常に硬いので特に伸ばすときは慎重にやらないと破損しちゃうかも。
ロボットモードの腰部ですが、腰に回転軸があるのに背中のキブルに干渉して全然回らないな?と思ってたら腰部の回転軸自体を前方にスライドさせる機構がありました(上の画像と下の画像を見比べてくださいね)。
手前にずらすと尻の後ろと背負ってるキブルの間に隙間が出来るのである程度腰回転できるようになります。一周できるほどではありませんが。
ただここを手前にスライドさせるのが糞っ固い。無理して引き出そうとすると回転軸破損させてしまうかもしれないという恐怖を感じるほどなので、無理は禁物ですよ!見た目的には手前に引き出さなくても全く違和感ないです。
腕や脛の横に 5mm ジョイントが多数備わっていますが、武器ストレージとしては私は背面の 5mm 穴を活用しています。これらの 5mm 穴はウェポナイザーやアーマーライザーとの連携遊びが捗るんだと思います。
頭部は G1 玩具準拠のマスク顔。アニメ顔アドオンあるんじゃないの?と思ったけど現時点では 3D プリンタ用のデータの奴しかなかったですね。ライトパイピング(集光ギミック)は非搭載で目は明るめのブルーで色彩されています。
ポージングは現在基準で肘膝の関節位置もバランスよくポージング巧者です。という事は私のようなセンスなしマンでもまあまあ格好いいポーズ付けられるって事ですね。
片足立ちもこなす体幹の良さ。
これはフィギュアスタンド使ってますが走ってるみたいなポーズもイケます。
ロボットモードのフィギュアスタンド用穴は背面のキブル側にありますが、ヒンジの左右に 1 つずつ、2 つ装備されているというちょっと変わった構成です。
立膝も当然できますよ!背中に荷物背負ったイメージというか、歩荷(ぽっか)っぽいスタイルと言いましょうか、こんなにキブルがデザインにマッチしちゃってる TF 玩具もちょっと珍しいのでは。
「武器(小)」これは多分「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー2010」の15話「戦いか死か?!」で独房に捕らわれたサンドストームが鉄格子を切断するときに使った腕に内蔵されたバーナー的な奴じゃないかと思います。
Fight or Flee | Transformers: Generation 1 | Season 3 | E15 | Hasbro Pulse
小型のピストルとして把持させても良いですね。
「武器(大)」は G1 玩具に付属していたサンドブラスターガンだと思います。
そしてロボットモードで使いどころにちょっと困るケージ。ぶん回し系武器?公式ではウインチを手持ちさせてる画が多いんですが肩に取り付けるとかもアリかも。まあ私は無かったことにしちゃうんですけど。
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ロボットモードでケージ持たせた画だとだタカラトミー公式のこの宣材画像のが楽しそうで良い(´^ω^`)
トランスフォーマーオフィシャルサイトの製品紹介ページにも同じ画があるんだけどそっちは背景が黒いのでタカラトミーモールの白背景画像の方がなんか「わーい」感あって可愛らしいんですよね。
似た人と。変形パターンがちょっと似てるけど全体のまとまりは圧倒的に TL-76 サンドストームの方が上。でも頭部周りの解釈が違う非正規の奴もまあ捨てがたい魅力はあります。
正直触ってみるまではここまで良玩具とは思ってなかったので、ホント TF は買ってみないと判らんですね。Twitter でちょっと厳しい意見見かけたり、TFWIKI でかなり辛辣な批判(”Unfortunately, Sandstorm suffers from a widespread design flaw”)が書かれてたりしますけど、そんな気にする程の欠陥は無いですよ!複雑な変形ですが覚えたら判りやすいし、楽しい!他キャラへのリデコやリカラーは割と難しいと思うのでアニメ顔ヘッドのリカラー辺りがそのうち発売されるんじゃないかと思っています。個人的にはバギーのリアウィング/ヘリコプターの尾翼部分はもうちょっと大型化されても良い様な気がするのでサードパーティのアドオンとか期待したいですね。
G1 玩具の現代的解釈としては決定版といって良いサンドストームだと思います。次は 3 モードとももっとアニメに寄せたデザインのマスターピースを是非ですね!
- 現時点までに発売されているサードパーティ製のサンドストームそっくり玩具は Unique Toys の Sworder と Dr.Wu の MS-36 Sand Leopard の 2 製品のみだと思います。Unique Toys Sworder は全モードでかなりアレンジが強く自動車モードはデューンバギーとは全く似ていないキャプテンスカーレットの強力装甲車みたいなデザインが特徴。頭部の黄色いトサカ状のパーツはヘルメットの一部という解釈でした。Dr.Wu MS-36 Sand Leopard はかなり G1 玩具に近いスタイルですがデューンバギーはチキチキマシン猛レースのマジックスリー(ゼッケン 2 なのにマジック「3」で紛らわしいとは常々)っぽいまとまりの悪さがありました。頭部の黄色いトサカ状のパーツは頭部と別パーツの解釈でオリジナル玩具に近い。↩